前回の記事では、自社ECとモール型ECの違いについてご説明しました。
今回は、ECサイトの運営で知っておくべき法律である「景品表示法」について、分かりやすくまとめたいと思います。
【景品表示法】 実際の商品や景品の質よりも優良であるように見せる表示や、過大な景品の提供を規制する法律 |
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この法律の目的は、「消費者による自主的かつ合理的な商品選択の阻害防止」です。
つまり、消費者が損をすることなく、よりよい商品を正しく選べるように、惑わす行為は禁止するというものです。
ひとつは、不当表示の禁止です。
不当表示の禁止
商品やサービス、取引について、以下のような表示は禁止されています。
(1)優良誤認表示
実際の商品より著しく優良なものである、または競業他社の製品より著しく優良であると誤認させる表示
(2)有利誤認表示
商品価格や取引条件が実際より有利である、または競業他社と比べ著しく有利であることを誤認させる表示
つまりは、消費者に嘘をついたらダメだよ!ということです。
価格二重表記に注意!
不当表示について、もうひとつ大事なものがあります。
商品を通常価格より安く販売する場合、1,000円→500円というように、価格を二重に表記することは、一般的に行われています。
そのため、多くの人が何の悪気もなく「1,000円で売っていたけど、3日間だけ500円で売るから1,000円→500円って書いておこう」と考えるでしょう。
しかし、比較対照に用いる元値に根拠がないと、景品表示法違反となる場合があります。
たとえば、元値がはじめから500円なのに「元値は1,000円です。でも今だけ500円で売ります!」と表示して売った場合、消費者はその表示を見て、「今がオトクなら買わなくちゃ!」と、有利誤認してしまいますよね。
そんな不当な取引が行われないためにも、元値には根拠が必要になります。
元値の根拠とは、
「その価格で販売されていた実績がある」
「その価格で販売している他社がいる」
「その価格が通常価格であることの証拠がある」などです。
どうすれば販売実績になるの?
上図のように、元値で販売していた期間と時期が重要になります。
(例1)の通り、セール開始日より8週間前から、4週間以上その価格で販売していれば、比較対照に用いることができます。
しかし、4週間以上販売していたとしても、(例3)のようにセール開始日から直近の2週間以上、元値とは違う価格で販売していた場合、実績にはなりません。
また、(例4)のように販売開始から2週間未満の場合も実績になりませんので、要注意です。
2週間以上の販売実績と、セール開始日までの2週間を意識するようにしましょう。
他社の販売価格とは?
地域内の事業者の相当数が実際に販売している価格を、「市価」として比較対照に用いることができます。
また、特定の競合他社が販売している商品であれば、その事業者の実際の販売価格と事業者の名称を明示することにより、「他社販売価格」として比較対照に用いることができます。
その他の通常価格の証拠
メーカーからの卸品なら、「メーカー希望小売価格」が販売時に有効であれば、比較対照に用いることができます。
実際の販売価格は小売りが決めるので、二重価格表記を有効活用し、競合他社と価格で勝負するか、付加価値をつけて差別化を図るかは腕の見せ所ですね。
モール型ECでは制御されていることも
この二重価格表記については、数年前に楽天市場で起きた不正な二重価格表記問題を受けて、各モール型ECでも慎重な動きがみられます。
モールによって販売実績を自動計算しているところや、エビデンスの表示など細かいルールが設定されていますので、モール型ECに出店する際はご注意を。
景品類の制限及び禁止
もうひとつは、景品類の制限及び禁止です。
景品表示法で定義する「景品」とは、「お客様を呼び込むために、事業者が自社商品やサービスに付随して提供する物品、金銭、その他経済上の利益となるもの」です。
この規制の対象となるのは、「懸賞」と「オマケ付き商品」です。
景品は競業他社との差別化を図るための、商品の付加価値として重宝しますので、ちゃんと規制について理解しておく必要があります。
それでは、具体的な規制内容を見てみましょう。
(1)一般懸賞
商品を購入したり、サービスを利用したお客様に対し、くじを引いてもらったり、クイズの正解率によって景品類を提供することを、後述する「共同懸賞」以外のものは「一般懸賞」といいます。
- 一般懸賞の例
- ・抽選券、じゃんけんなどにより提供
・外観から判断できない当たり付き商品
・パズルやクイズの正誤により提供
・競技、遊戯の優劣により提供 など
一般懸賞で提供する景品類は、以下のように限度額が定められています。
懸賞による取引価額 | 景品類限度額 | |
---|---|---|
最高額 | 総額 | |
5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
5,000円以上 | 10万円 |
例えば、1,000円の商品を購入した人が、一回くじを引ける懸賞の場合、景品は2万円以下である必要があります。
また、商品の売上予定総額が100万だとしたら、2%は2万円なので、用意する景品の総額は2万円までとなります。
これを超える金額の景品を用意すると、違反となります。
(2)共同懸賞
- 市町村などの一定の地域や、多数の事業者、商店街ぐるみなど、複数の事業者が参加して行う懸賞を「共同懸賞」といいます。
この場合は、景品は取引価額に係わらず最高額は30万と定められており、総額は売上予定総額の3%までとなっています。
(3)総付景品(ベタ付け景品)
懸賞によらず、商品の購入者やサービスの利用者にもれなく提供する景品類は、「総付景品」と呼ばれています。
オマケつきペットボトルがよく見る例ですね。
申し込み順や来店先着順という制限を設けたものでも、これに該当します。
総付景品にも、以下のような限度額が定められています。
取引価額 | 景品類の最高額 |
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1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引価額の10分の2 |
オープン懸賞は規制の対象にならない
懸賞の形として、「オープン懸賞」と呼ばれるものがあります。
これは、上記の「一般懸賞」や「共同懸賞」とは異なり、商品の購入やサービスの利用といった取引を条件とせずに、テレビやWebサイトなどで広く企画を告知し、はがきやWebサイト、メールなどで応募できるものです。
このような企画の場合、景品規制は適用されないため、現在は具体的な上限額は定められていません。
費用対効果をよく考えたうえで、景品類の選定を行う必要がありますね。
参考
もっと詳しく景品表示法を知るには、消費者庁のWebサイトを確認してみてください。
表示規制の概要:http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/hyoji/hyojigaiyo.html
景品規制の概要:http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/keihin/keihingaiyo.html
以上、知らないうちに違反してしまいそうなことばかりの景品表示法でした。
競合が多い中、少しでも売上を伸ばしたいという想いが暴走しないよう、お客様から信頼される誠実なECサイトを目指していきたいですね。